【住宅ローン】同性パートナー同士で住宅ローンを申し込むときに必要な書類と、話し合っておくべきこと。

FP

近年ダイバーシティ実現に向けて大手企業でもLGBT問題解決に取り組んでおり、社会全体が変わろうとしています。2017年にはみずほ銀行と楽天銀行が同性パートナーを対象とした住宅ローンの取り扱いを開始。最近ではau じぶん銀行など、他の金融機関でもLGBT等による同性パートナーに向けた住宅ローンを展開する動きが見られます。
しかし同性パートナー同士で住宅ローンを組むことができても、法律の整備が追いついていないのが現状です。

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LGBTについておさらい。

Lesbian(レズビアン)           同性を好きになる女性。
Gay (ゲイ)                       同性を好きになる男性。
Bisexual(バイセクシャル)  異性を好きになることもあれば、同性を好きになることもある人。Transgenter(トランスジェンダー) 生まれた時に割り当てられた性別と、自分が認識している性別が一致しない人。(性同一性障がいを含む)

LGBTはこれらの頭文字を取った性的マイノリティを表す総称のひとつです。LGBTは個人の趣味や一過性のものではなく、本人の意思で変えられるものではありません。私たちは自分の中にある無意識の偏見を取り除くことが重要です。

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住宅ローンを申し込む前に用意しておくべき書類。

金融機関よって違いはありますが、一般的には以下の書類が必要となります。どれも作成に時間と費用がかかるものなので、住宅ローンを申し込む前に何が必要になるかを事前に確認しておくと慌てなくて良いでしょう。

・合意契約書 「二人が愛情と信頼に基づく真摯な関係であること。二人が同居し、共同生活において互いに責任を持って協力し、その共同生活に必要な費用を分担する義務を負うこと。」をお互いに認め契約書にしたもの。
・公正証書の正本または謄本 合意契約書を公文書にしたもの。(合意契約に係る公正証書)
・任意後見契約書 意思判断能力が低下した自分の代わりに、その後の日常の手続きや財産管理をお願いする人を先に決めておくための契約書。
・登記事項証明書 任意後見契約を法務局で登記したもの
・自治体の発行する同性パートナーシップ証明書またはこれに類する証明書

同性パートナーが利用できる住宅ローンの種類。

  • ペアローン
    2人で住宅ローンを組み、それぞれがお互いの連帯保証人になります。
    例えば、3,000万円の家を購入する場合。
    主契約者A:1,500万円 連帯保証人B  担保提供者B / 物件所有の持分割合 1/2 団信加入有
    主契約者B:1,500万円 連帯保証人A  担保提供者A /  物件所有の持分割合 1/2 団信加入有
    特徴としては、住宅ローン減税の適用が受けられること。団体信用生命保険に加入できており、住宅ローンに付随する疾病保障保険の加入を検討することが可能になる点が挙げられます。
    一方で住宅ローンを単体で2本契約するため、契約にかかる手間や手数料等はローンごとにそれぞれで負担する必要があります。
  • 収入合算
    どちらが住宅ローンを組んで、もう一方が連帯保証人になります。
    例えば、上記の例で見ていきましょう。
    主契約者A:3,000円  連帯保証人B 担保提供者A /  物件所有の持分割合 1/1 団信加入有
    特徴としては、住宅ローンをどちらか1本で契約するため契約にかかる手間や手数料等は少なくなります。ただし、住宅ローン減税の適用は住宅ローンの契約者しか適用されず、団体信用生命保険の加入や疾病保障保険の検討についても同じです。

自宅を購入。住宅ローンの返済と併せてパートナーと話し合っておくべきこと。

  • 税金について
    相続にかかる相続税は配偶者の場合、1億6000万円までが非課税となりますが、贈与にかかる贈与税は歴年贈与の場合、110万円基礎控除後の課税価格に対して課税価格が大きくなればなるほど税率が高くなる超過累進課税です。また小規模宅地等の評価減や、物件を売却する場合の譲渡所得の計算において、納付済みの贈与税は取得費に加算することができません。贈与税は相続税よりも高額になってしまうことを計算に入れたうえで、お互いのライフプランを立てるようにしましょう。
  • 遺言書の作成
    同性パートナーは法定相続人にはなれず、遺言書がないと法定相続が優先されてしまい被相続人(亡くなられた方)の相続財産は法定相続人に相続されることになります。相続人と争うことがないよう、いざという時のために遺言書を作成し自分たちの遺志を明確にしておいたほうが良いでしょう。
    ただし遺言書があっても法定相続人には遺留分請求できる権利があり、相続人全員の合意があれば遺言書の撤回を裁判所に申し立てすることができるので注意が必要です。

まとめ

住宅ローンやアパートローンの業務を担当しています。
債務者が亡くなられると住宅ローンは団信保険で完済されますが、その後の物件の相続登記(所有者変更)や預金相続といった所定の手続きがあります。
その際に、前妻との間にお子さまがいて話し合いができない。遺言書があるにもかかわらず、相続人全員がそれに同意せず分配方法を遺産分割協議に変更したものの分割協議が纏まらない。お独り身の方が親族は兄弟姉妹のみのだったため、相続人不在で自宅を含めた財産は国庫に移転された。など、相続手続きがなかなか進捗しないケースが多々あります。
相続=争族とはよく言ったもので、法律上の夫婦でも相続手続きは大変なことが多く、同性パートナーであれば尚更ではないでしょうか。
性的マイノリティの方たちを対象にした住宅ローンへの取り組みは素晴らしいことだと思いますが、ローン担当者としては、将来起こるかもしれない「パートナーに万が一のことがあった場合」への不安を払拭することができません。「自分の身は自分で守る」「自分たちのことは自分たちで決める」。住宅を購入する際はパートナーに万が一のことがあった場合を想定したうえで将来についてしっかりと話し合い、対策することが後々のトラブルを未然に防ぎ円満な人生を生きていく最善策だと思います。